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前提を疑え。 ~北欧研修⑨「まとめ」

北欧研修①最近、「ブログの文章が長過ぎる」との指摘を受けています。(苦笑)

北欧研修シリーズ、遂にラストでございます。
当初の研修目的ごとに整理をして記載したいと思います。
研修テーマは以下の二つです。
①「スウェーデンの地方分権について」
②「高負担高福祉国家の実情について」

①「スウェーデンの地方分権について」
ヴェストラ・イェータランド県(スウェーデン)の副知事に、「スウェーデンでは、中央集権国家であった時代はあったのか?」と質問したところ、「自分が知る限りでは、国が全ての事を決め、地方に指示をして実行させるということをしていた時代はないと思う。そもそも、スウェーデンではそのようなやり方は国民に人気がない。」という回答が返ってきました。
そして、副知事のお話の根底にあるものとして、「地域のことを地域で決めるのは自然なこと」というのを感じました。
北欧研修②
つまり、地方分権の本質というのは、地域のことは地域で決めるという非常に自然でシンプルな事であって、そこから組み立てなければ本当の意味での地方分権というのは実現されないということです。
地方議会の議員数が多いというのも、「地域のことは地域で決める」ということを具現化するために、より多くの住民からの意見を集めて議論を行うのだという意志の表れだと思います。

国で多くの物事を決めていくというのは、住民から遠いところにあるので住民の声が届きにくいのはもちろんのこと、組織が大きいため意志決定に時間がかかったり、実態に即していない政策を実施してしまいがちです。
デンマーク福祉省の事務次官補も、「地域のことは地域が決めるべきで、国がとやかく言うことではない」と話されていました。

また、地方分権改革推進委員会などの日本国内で行われている地方分権の議論を聞く中で、北欧研修前の私は、権限と財源がきちんと委譲されない限りは地方が主体的にやれることは少なく、まずは国においてしっかりとした制度改正が行われないことにはどうにもならないと考えているところがありました。
北欧研修③しかし、北欧に訪問して感じたのは、今の日本の地方では、財源と権限が委譲されたとしても、地域自身で議論して様々な事を自ら決めていけるほどの「自立した地方」には成り得ていないのではということです。
地域のことは地域で議論して、自ら責任持って物事を決めていくというシンプルな住民自治の経験を何度も積み上げていくことを今しておかないと、本格的な地方分権時代が到来したときに地域が立ち行かなくなります。
そういう意味で、今、地方がやらなければならないことがたくさんあると思いました。

北欧研修④②「高負担高福祉国家の実情について」
福祉国家として有名なスウェーデンの現状を見てきての率直な感想は、完璧な制度は無いのだなということです。
例えば、スウェーデンでは、18歳未満は無料であるなど医療費が安いことから、病院に行く人が多く、通常診療なら何ヶ月も先まで予約でいっぱいであり、救急診療でも出血していない限りは数時間待ちということで、日本では考えられない状況です。

北欧研修⑤しかし、スウェーデンのIT企業経営者からも話があったとおり、社会保障制度がしっかりしていて、最低賃金でも家庭が持てたり、労働法が厳しく雇用が守られているなど、国民が安心して生活ができている部分が今の日本よりはるかに多くあると感じました。
そのような「高福祉」を支えているのは、国民による「高負担」です。
ここで大切なのは、国民が、負担する重さと行政から受け取るサービスが同程度のものだと感じられるかどうかです。
スウェーデンでは、そのために、行政や政治を担う人間が不断の努力を行っており、その努力があるからこそ住民からの信頼を勝ち得ているように見えました。

北欧研修⑥以上①②のことを踏まえた宮崎県での展開として、私が行うべきだと考えることの一つは「情報公開」です。

①で記述している『自立した地方』となるためには、「地域のことを地域で決めるための判断基準となる情報を県民と県庁が共有するのは当然のこと」というスタンスでの情報公開が必要だと思いますし、②で記述している「行政に対する信頼を勝ち得る」ためにも徹底した情報公開が必要条件だと思います。

この情報公開をするにあたって、具体的に必要だと思うことを以下に挙げます。
《① ~地域のことを地域で決めるための判断基準となる情報を県民と県庁が共有する》
・事業計画時にパブリックコメントなどを実施するときは、「計画変更もしくは中止もあり得る」というスタンスで臨むこと。(「住民の声は一応聞いた」というようなアリバイ作りはしない)
・重要施策については、県民の中で議論が巻き起こるように工夫すること。
・できるだけ早い段階で計画発表を行い、県民の中で議論ができる時間を確保する。
《② ~行政に対する信頼を勝ち得る》
・どういう理由でどれだけの税金が必要なのかを分かりやすく明示する。
・支払われた税金が何に使われているのか住民に見える仕組みの構築。
(例えば、自動車税を支払う際の領収書に「3万円のうち6,500円は○○に使われ、3,300円は△△に使われ・・」と記載するなど)
・県民にも、現在の制度や事業が本当に適切なのか常日頃から見直せるよう県の施策を分かりやすく公開する。

北欧研修⑦①については、宮崎市における地域コミュニティ税の導入や橘通り公園化計画の進め方において大切な視点だと思いますし、②についても、現在の国政における消費税引き上げ論議の中で、なぜ必要なのかを具体的に示して、負担は発生するが、その分だけ将来に対して安心が生まれるのだということを国民に語るにあたり重要なことだと思います。

私自身は、日本の現状を打破するためには、ある程度の高負担高福祉(もしくは中負担中福祉)が必要だと考えています。そして、それを実施するための前提条件として、行政は住民に信頼していただかねばなりません。
今の地方分権への大きな流れの中、これからの地方政府こそが国民に対して主体的に行政を担うことになります。(そうしなければなりません。)
そのときに、宮崎県民に信頼してもらえる「宮崎県」にできるよう、今回の北欧研修で学んだことを活かして、地方政府の行政マンとしての役割を果たせる人材になりたいと思います。

北欧研修⑧最後に、今回の研修で学んだもう一つの大きなことは、「前提を疑え」ということです。
日本に帰ってきて、研修前の自分は、狭い世界のことだけで物事を考えていたなということを感じています。もちろん、国会議員でもない以上は現行法の枠内でしか実際の施策は行えないのですが、県民の生活福祉向上を図るにあたっては、柔軟に様々な手段を検討すべきだと思いますし、前提となる枠組みも含めて将来的にはどうあるべきだということがしっかりと議論できる人間にならなければと思いを新たにしたところです。

この北欧研修シリーズのブログを書いていて、学んできたことを文章にして表現することの難しさを非常に感じました。
現地では、いろんな話を聞き、現場もたくさん見させていただきましたが、どれだけこのレポートの中で表現できただろうかと思います。自分の現在の力不足も痛感したところです。

今回、このような形で海外に行かせていただき、各分野の最先端で活躍されている方のお話を生で伺う機会をいただけたのは、何事にも代え難い貴重な経験でした。
このことを、今後の県庁生活の中で県政に少しでも活かせるように一つ一つ努力していきたいと思います。

北欧研修⑨今回の研修で一番苦労したのは、実は出発前の現地とのやり取りでした。
準備を始めた当初、訪問先のアポイント取りをいろんな手段で試みましたが、1ヶ月以上うまくいかない時期がありました。
そんなときに巡り会ったのが、通訳も1日してくださった高恭子さんです。
訪問先のアポイント取りや他の通訳の方の手配等の現地でのコーディネートをしてくださいました。
今回の研修を無事終えることができたのは、高さんのお陰でした。
最後に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

北欧研修⑧ ~スウェーデンにおける児童養護

マルメ市役所(スウェーデン)①いよいよ、最後の訪問先である「マルメ市役所」です。
対応してくださったのは、広報部長(女性)と児童養護担当官(男性)のお二人でした。

《市の概要》
マルメ市の人口は、約28万人。
スコーネ県内最大の都市です。
(ちなみに、スコーネ県の人口は約116万人。宮崎県とほぼ同じです。)

マルメ市は、スウェーデンの南部にあり、海を渡ってすぐ隣がデンマークの首都コペンハーゲンになります。
2000年に、コペンハーゲンとマルメを結ぶ橋が架けられ、アクセスが向上しました。
(早朝から深夜まで20分おきに電車が運行されています。所要時間はわずか35分。)

マルメ市役所(スウェーデン)②(←広報部長と。)

大都市(コペンハーゲン)が近くにあるため経済状況が非常に良く、失業率もマルメ市では3.5%程度とのことでした。(スウェーデン全体の失業率は約5%。)
その他、コペンハーゲンにもマルメにもそれぞれ空港があるなど、交通インフラが整っていることや、外国出身者が多い街であることから、外国人がビジネスしやすい環境にあるというお話しでした。
また、デンマークと比べ、スウェーデンは物価が安く、デンマーク人がマルメによく買い物に来るそうです。

《マルメ・コミューン(市役所)》
市役所の職員数は、約2万人です。
市予算が、500億クローネ。約7,500億円になります。

《医療》
この地域(スコーネ県)では、1回の診療にかかる費用は150クローネ。(土日は300クローネ)
上限は、1,000クローネとのことでした。

前述している通訳の方から聞いた金額とは少し異なっています。
(通訳の方の住所は、ヴェストラ・イェータランド県でした。)
これにより、自治体ごとに医療費の設定が異なることが分かります。

マルメ市役所(スウェーデン)③

(←児童養護担当官と。)

《児童養護》
この日の訪問先で、主に調査してきたのは「児童養護」についてです。
私のブログに「児童養護施設」という言葉がよく出てきますが、「児童養護施設」とは、虐待や経済的理由などの事情により家庭で生活をすることができない子供を養育する施設のことです。
この分野について、スウェーデンの現状を調査しました。

100年ほど前、スウェーデンは非常に貧しい国で、経済的に家庭で育てられない子供はオークションに出されることもあったそうです。
施設に預けられた場合も、劣悪な環境により、子供が死んでしまうことも度々あったとのこと。
そこで、1924年に児童福祉法が制定されます。
親が子供を私物化して酷使し、虐待することを防止するための法律です。
それ以後、子供の権利を守る法改正や政策実施がなされていきます。

また、スウェーデンは、2度の世界大戦に参戦しなかったことで、戦時中はヨーロッパにおける物資の供給元となり、戦後もヨーロッパの多くが焼け野原となる中、同じく供給元となって、順調に工業が発展していきました。
これが、今日の高福祉国家を支える経済力の礎となったようです。

それでは、歴史については簡単にこのくらいにして、現在の児童養護政策に入ります。

日本では、養護の必要のある子供のほとんどが施設(児童養護施設)で生活しており、里親家庭に預けられている子供は全体の1割にも満たない状況ですが、スウェーデンでは、多くの場合、「養育里親(Foster family)」の元で育てられます。
(スウェーデンも、1950~90年代は施設が多くあったそうです。ただ、Foster familyも昔からスウェーデンにはあったとのこと。)

スウェーデンにおいて、この「養育里親(Foster family)」に預けられる子供の割合は、全体の55%を占めます。
(その他は、「Residential Care」と呼ばれる10人前後で暮らす小規模施設か、子供に問題がある場合に入所する「Homes for special supervision」(児童自立支援施設)になります。)

子供が保護され、養護の必要があるとされたときには、まず、親戚の中で「養育里親(Foster family)」になってくれる家庭がないか探すとのことでした。
ここが、日本と大きく違う点です。
日本でも、親戚に預けられる場合はありますが、日本における制度上の「里親」になることは非常に稀です。つまり通常は、親戚の子供を預かっても、行政からの支援も無く、児童相談所の監督範囲内にもなりません。
スウェーデンでは、親戚であっても「養育里親(Foster family)」として子供を預かれば、行政の監督の下、制度上の支援を受けることになります。
「養育里親(Foster family)」のうち、約45%が親族とのことでした。

日本では、「親族に経済的に余裕があるところがあるなら、そこで当然面倒を見るべき」という考え方が根底にあるのか、親族が養護の必要がある子供を預かっても、基本的に行政からの支援策はありません。
これは、日本とスウェーデンでは家族の考え方が歴史的に違うのもあるでしょうし、このことだけをもって一概に良いとも悪いとも言えませんが、少なくとも、スウェーデンでは、子供の医療費や教育費が無料であることや、児童手当が手厚いことなどからも、「子供は社会全体の共通財産であるから社会全体で支える」という考え方がしっかり根付いているのだと思いました。

また、マルメ市(人口:約28万人)において、直近の1年間での児童虐待数は50件とのことでした。
ちなみに、都城児童相談所管内(人口:約30万人)においては、74件(平成19年度)です。
日本ほどは多くありませんが、マルメ市の担当官は「非常に大きい数字だ」と話されました。
ただ、元々スウェーデンに住んでいるスウェーデン人の家庭では、あまり虐待は起きていないそうです。
移民を多く受け入れている国なので、移住してきた外国人に虐待が多く起きているとのことでした。
(移民の方は、文化はもちろん、子育てやしつけの仕方も違うので、親は普通に叱っているつもりでも、スウェーデン人の感覚では虐待しているように見えてしまい、そういう意味で数が増えてきている部分もあるそうです。)

次の事は、今回の研修中に聞いた話ではないのですが、出発前に読んでいた北欧で子育てをされた日本人女性の本に書いてあったことに、「北欧には虐待を生まない心の余裕がある」というのがありました。
子供を持つ親を助けてくれる様々なシステムがあり、育児ノイローゼにならない環境になっているとのことでした。

スウェーデンの子供たち①スウェーデンの子供たち②

スウェーデンの子供たち③
確かにスウェーデンの街角を歩いていると、子供と手を繋いで歩いている若いカップルや、乳母車を傍らに置いて、食事やお茶をゆっくり楽しんでいる母親たちを多く見かけました。
日本で見るより、はるか高い確率でした。
これは、電車内の通路が非常に広く、大きな乳母車を押して乗車しても余裕があることなど(実際に電車内でもよく見かけました)、駅やデパートがバリアフリーになっていて、親が子供を外に連れ出しやすい環境が整っていることも大きいと思います。
スウェーデンの子供たち④(←美術館や博物館には必ずと言っていいほど、子供が楽しめる展示物や遊べるコーナーがあったのも驚きでした。)

また、あれだけ普段から子供を目にするというのは、街自体の印象も明るくなりますし、周囲の人も子供に対する思いやりが自然に生まれるように思いました。
このようなことも、「子供は社会全体の共通財産である」と国民の意識を醸成するための一翼を担っているのではないかと感じました。

《その他》
若者や移民の投票率アップのために、ヒップホップで選挙に行くことを呼びかける曲を作り、その曲でテレビCMを作成したことや、美しい景観づくりに力を入れていることなどの説明もありました。

他に、ここでも、「スウェーデン人は日本と同じくあまり子供を産まないが、移住してきた外国人が出生率を引き上げている」という話が出ました。

全ては書けていませんが、「マルメ市役所」編はここまでにします。
(↓通訳を頑張ってくれたトーマス君との記念写真。)
マルメ市役所(スウェーデン)④マルメ市役所(スウェーデン)⑤

北欧研修⑦ ~スウェーデンの県庁

次に訪れたのが、「ヴェストラ・イェータランド県庁」。
対応してくださったのは、副知事と担当官の方です。
お二方とも女性でした。
スウェーデンの県庁③スウェーデンの県庁④
まず、職員用の喫茶室のようなところに案内され、紅茶をいただき、それから会議室に案内され、副知事自ら「ヴェストラ・イェータランド県庁」について説明をしてくださいました。
(↑3人並んでいる写真の私の左に座っている方が担当官の方で、右側が通訳さんです。・・・撮影者は副知事です。(苦笑))

スウェーデンの県庁②《県の概要》
ヴェストラ・イェータランド県の人口は、約150万人。
県内には49の市町村があります。
県内最大の都市がヨーテボリ市で、人口が約47万人です。
(ヨーテボリ市のことは、「北欧研修④」に記載。)
県予算が、423億クローネ(2008年度)。1クローネを15円として換算すると、6,345億円となります。

以上より、宮崎県より少し規模が大きいですが、だいたい同程度の県ということが分かります。
(宮崎県・・・県人口:約114万人、「平成の大合併」前の市町村数:44、県庁所在地(宮崎市)人口:約37万人、県予算:約5,700億円)

スウェーデンの県庁①
《医療》
まず、副知事から、県庁が主に取り組んでいるのは、「保健医療(heath care)」と「成長及び発展(growth and development)」の2つの分野であるとの話がありました。

県全体予算の中身を見てみると、その9割が保健医療に使われています。
なので、スウェーデンの県庁の主な役割としては、病院経営などの医療分野であることが分かります。

ヴェストラ・イェータランド県内にある公立の医療施設は、17の総合病院、121の診療所、170の歯科診療所。
(スウェーデンには、私立の医療機関はほとんどありません。)
医療サービスの中身は、地域医療(初期医療)、予防医療、救急医療、高度医療の4つに分類されます。

他には、以下のことを話してくださいました。
・18歳未満の医療費は無料であること。
・大人の医療費も高くないこと。
 (個人負担が一定額を超えると支払い不要となる)
・予防医療に力を入れていること。
・6歳までの医療にも力を入れていること。
・待ち時間が長いことが問題点。

《医療以外》
ヴェストラ・イェータランド県では、県立芸術劇場(オペラハウス)の運営などを通して、文化面にも力を入れているとのことでした。
その他に県として取り組んでいる事としては、列車などの交通行政、観光振興、産業振興、美術館運営などが挙げられました。

《県職員》
ヴェストラ・イェータランド県の職員数は5万人を超えます。
そのほとんどが、医師や看護師などの医療スタッフです。

スウェーデンの県庁⑤スウェーデンの県庁⑥

スウェーデンの県庁⑩
(←↑県庁の建物内にて。この建物は、昔、王室の迎賓館だったそうです。)

《議会》
この「ヴェストラ・イェータランド県」県議会の議員数は149人。
宮崎県議会は45人ですので、人口や予算規模の差を勘案しても、はるかにスウェーデンの地方議会の方が多いことになります。
(地方議員数が非常に多いことについては、私が今回の研修テーマにした「地方分権」と密接に関わる部分なので、あとで論述します。)
また、このスウェーデンの地方議会は課税権を持っています。

そもそも、スウェーデンの地方自治制度は、日本の地方のそれとはかなり違います。
日本では、知事や市町村長(首長)に権限が集中しており、多くのことは首長が決定し、実行します。
日本の地方議会ができることは、法律で限定されていて、執行部に対する質問などしかできません。
このように首長の力が強いタイプは「大統領型」と呼ばれます。
先進国において、地方自治体に「大統領型」を導入している国はあまりありません。

スウェーデンの地方議会は、議院内閣制に近いシステムになっています。
つまり、議会が行政の方針を決め、指揮をします。
日本のように直接選挙で選ばれる首長はいません。
とはいえ、対外的な顔としての首長は必要なので、議長が首長を兼ねます。
また、議会の中には執行委員会と各種の常任委員会があり、執行委員会が行政運営について統括的なポジション(国で言えば「内閣」)となるので、執行委員会の委員長が実質的な首長になります。
先程、「議院内閣制に近いシステム」と書きました。議院内閣制と異なるのは、議院内閣制であれば与党だけで内閣を作りますが、執行委員会は議会の議席数に比例して構成される点です。

スウェーデンの県庁⑨《地方分権》
スウェーデンでは、国からの特定補助金を一部の例外を除いて廃止し、代わって包括的補助金が導入されています。
つまり、国から渡されるお金は、国に「このことに使いなさい」と使途を限定されるのではなく、地方で考えて自由に使ってもよいということです。
日本では、国に使途を限定されている、いわゆる「ひも付き補助金」が多くあり、これが霞ヶ関の力の源泉となっています。

地方議会の各常任委員会は、執行機関におけるそれぞれの分野のトップとなり、重要な役割を果たします。
この議会内の委員会をどういうものにするかというのは、どのような地域を目指すのかということにもつながる根幹部分です。
スウェーデンでは1991年法で、執行委員会だけは必置とし、常任委員会等については委員の数を含めて地方自治体の自由に決められるようになりました。

また、前述のとおり、日本と比較すると、スウェーデンの地方議員数は人口に対して非常に多いです。
しかし、議員全員がフルタイムの報酬をもらっているわけではないので、議会にかかる経費が高くなっているわけではありません。
きちんと食べていけるだけの報酬が支払われているフルタイムの議員は一部であり、多くの議員はパートタイムで、他に仕事を持っています。
(スウェーデンの市町村議会では、フルタイムの議員は多くても1割強であり、多くが兼業をしているため、議会の開始時刻も仕事を終えて出てくることのできる夕方からになっています。)

議員の数が多いので、その分、周りに政治家がいる確率が高いことになります。
それにより、住民にとって行政や政治が非常に身近なものになっていて、普通の人が議員(政治家)にしっかりモノが言える空気があるとのことでした。

このことは、日本において大いに議論されるべきことだと思いました。
地方議会に対し、何を求めるのかということです。
単純に議員定数を減らして、経費削減をするというのも分かりますが、議員一人分にかかる経費を減らしても経費削減という目的であれば達成できます。
例えば、「経費削減」と「より多くの住民の声を拾い上げる」という2つの目的を達成するとしても、議員一人分の経費を大幅に減らして、議員定数を少し増やせば、目的達成となります。
しかし、これにより、議員報酬だけでは生活できなくなるので、兼業をしなければならなくなり、議員の専門性は低下するでしょう。
つまり、地方議会に、政策立案能力などについて高いレベルを求めるのならば、議員一人に高い報酬を払うことが必要でしょうし、地域住民の意見をより多く反映することを重視するのならば、議員定数を増やし、報酬を下げればよいと思います。
まずは、「どういう地方議会を目指すのか」を議論することが先なのです。

学校教育は、以前は国の管轄でしたが、今は市町村(コミューン)の管轄であり、警察は、以前は市町村(コミューン)の管轄でしたが、今は国の管轄になったとのことでした。
このことから分かることは、スウェーデンでは、どの分野をどこが管轄するという根幹に関わることについても、非常に柔軟に制度改正しているということです。
ヨーテボリ市役所で、スウェーデンでは投票率が何故高いのかと質問したときに、担当部長が「政府や自治体が変化をもたらしてくれると国民が考えているから投票に行くのだ」と話されたことと繋がる話だと思います。

最後に、民主主義で大事なことは、「情報公開」と「一人一人の住民を大切にする姿勢」であり、この2つは基本条例となっているという話がありました。
行政でも、議会でも、裁判所でも、非常に情報公開が進んでいて、ほとんどの行政資料がインターネットで閲覧することができるそうです。

また、例えば、公立病院を建設する計画があるときには、まず住民に意見を聞くなどして、計画が進み出す前にしっかり議論を行うのだということを盛んにお話しくださいました。
ちゃんと住民と合意形成がなされたものでないと実行に移さないとのことでした。

ということで、「ヴェストラ・イェータランド県庁」編はここまでです。

全ての質疑応答が終了した後、案内された部屋に行くと、食事が準備してありました。
↓ここは、昔、王室迎賓館の応接室だった部屋です。
とっても感激でした。
(ちょっと緊張しています。(苦笑)↓)
スウェーデンの県庁⑦スウェーデンの県庁⑧

北欧研修⑥ ~国民の生活

北欧の街角①(←北欧の街角。)

スウェーデンでは、通訳及び訪問先のコーディネートをしてくださった方のご尽力により、素晴らしい研修とすることができました。

その方は、スウェーデン人とご結婚され、向こうに移住された日本人女性の方です。

スウェーデンで子育てもされているその方に、現地での生活について、いくつか質問させていただきました。
その内容を箇条書きで書きたいと思います。
(研修期間中、スウェーデンで通訳をしてくださった方は、コーディネートをしてくださったその方を含めて合計3名でした。そのうち2人が日本人妻の方。以下は、そのお二人からの聞き取り結果です。)

北欧の街角②《育児・出産》
スウェーデンのほとんどの家庭が共働きで、子供が1歳になると保育所に預ける。
スウェーデンでは、夫も育児休暇を30日以上取らなければならない。その場合は、80%の所得補償がある。(但し、補償金額に上限がある。)
出産費用は、検診時からいっさい無料。地域の保健所のようなところで助産婦による定期検診を受け、出産のときのみ、施設の整った病院に行く。
(スウェーデンで出産された通訳さんのお一方は、「子供を産んだ日に、病院から「退院するか?」と聞かれて、それはさすがに無理だと伝え、もう一日入院させてもらった」というお話をされました。本当に出産する僅かの間しか病院にはいることができないとのこと。つまり、至れり尽くせりの日本の産婦人科とは、かなり違うようです。)

《教育》
教育費は大学院まで無料。博士課程になると手当がもらえる。
・18歳になるまで児童手当が支給される。一人目が1,050クローネ、二人目が2,300クローネ、三人目が4,000クローネ。
(1クローネ・・約15円)

《医療》
医療費は無料ではない。感覚として、むしろ高いと思う。
・1回の診療につき、200クローネかかる。(大学病院だと300クローネ。)
・風邪であろうが、心臓手術であろうが、病気の軽重に関わらず、一度の診療にかかる費用は200クローネである。
・一つの病気に対し、何回診療を受けても最高で1,200クローネまでで、その後それ以上費用がかかることはない。
・普通診療の場合、3ヶ月先まで待たねばならぬ事もしばしば。救急窓口であっても、血が出ていない限りは、4~5時間は待たされる。
・スウェーデンの病院は、基本的に公立。私立病院も僅かであるが存在し、そこではすぐに診療してもらえる。但し、1回につき500クローネほどかかる。
18歳未満の子供の医療費は、救急病院での処置を除いては無料。
・歯の治療費は高い。1回の治療につき、500~600クローネ。

《消費税》
・消費税が25%ということで高税率ではあるが、表示金額に税金分が含まれているため、普段、買い物をする中で、税金が高いということを感じない。(分からない。)

《住居》
住居費は高い。例えば、一戸建ての家を買うとしたら、3,000万円の購入資金に加え、更に家賃として毎月10万円ずつ(光熱費込み)支払っていくようなシステムになっている。スウェーデンにおいて、「家を買う」というのは、簡単なことではない。

北欧の街角③北欧の街角④

《国民生活》
・物価は高い。(ex. 500mlペットボトルのジュースが、300~400円くらい。)
・国民の生活は、非常に質素である。
貯金をする国民ではない。(貯金をするだけの余裕がないというのもある。)税金として、国に貯金している感覚。「国がお財布」のイメージ。
外国人に対して、非常に寛容な国である。例えば、外国人がスウェーデンの学校に通えるチャンスは数多く設けてあり、また、人種差別をしたとなると厳しく罰せられる。なので、移住してくる外国人が多く、混血の子供も多くいる。スウェーデン国内でよく言われる冗談に、「あと100年もすれば、純粋なスウェーデン人はいなくなる」というのがある。
・出生率は高いが、これは移住してきた外国人が引き上げている。
・一部の銀行などで、「財政危機が起こる可能性がある」と言って、個人年金などの老後の商品を販売しているところもある。

いかがでしょうか?
スウェーデンでの生活が、少し垣間見えましたかね。
今日はここまでです。

明けました。

明けましておめでとうございます。
旧年中は、大変お世話になりました。
本年も、このブログと崎田恭平をよろしくお願いいたします。

今年も新年の抱負から入りたいところですが、当面のヤマである17日(土)の「北欧研修報告会」を終えてから、改めて書きたいと思います。

ちなみに、昨年の抱負は、『原点に帰る』でした。
(2008年1月1日ブログ 「今年の抱負。」)
『原点』とは、学生時代に取り組んでいた「児童養護」のことと、我が地元である「日南」のことでした。

一つ目の「児童養護」については、1月から始めた週1回の家庭教師を継続することができましたし、前回のブログに書きましたとおり、「カリタスの園」においてもクリスマス会まで展開することができました。
二つ目の「日南」については、日南市青年団の藤沢さんや山下さん達のお力により、いろいろな活動に参加することができ、前進しましたが、まだまだのところがあります。
(「日南」については、数年のうちに移住も視野に入れようと思うところです。)

今年の抱負は、また後日。

さて、今日の本題に入ります。
今回は告知をさせていただきます。
上にもチラリと書いていますが、「北欧研修報告会」についてです。
「みやざきみらいフォーラム」のような形式で、「Mfnet(県内若手公務員自主勉強会)」の中で研修成果報告会を行います。
「Mfnet勉強会」は、これまで基本的に公務員を対象としてきましたが、今回は一般開放することとしました。
発表者は私だけでなく、ドイツなどで研修を行った清武町職員と、昨年度、東京の民間企業で1年間研修を行った県庁職員、そして私の計3人です。

これまでのブログで書いているとおり、北欧で学んできた「地方分権」と「高負担高保障国家」について話をさせていただきます。
なんだか取っ付きにくそうな2つのワードですが、決して難しいことではなくて、北欧で感じた「住民が自分たちのことを自分たちで責任持って決めていく」という本来ならば当たり前であるはずの「地方分権」の姿について自分の言葉で話せたらと思っています。

・・・これまでに何度か、このような人前での発表をしたことがありますが、その度に「伝えること」の難しさを実感し、いつも反省と後悔が頭に残ります・・・。(苦笑)
今回も多分拙い話で大変恐縮なのですが、うまくなるには何事も経験ということで、貴重な機会と前向きに捉え、精一杯やらせていただきます。

第13回Mfnet勉強会 ~「研修報告会」
 【日時】 1月17日(土)
       受付 13:30~
       報告会 14:00~
 【場所】 宮崎市民プラザ 4階 和室
 【参加費】 無料
 ※ 報告会終了後17:30より、懇親会を予定しています。
   (会費:3,000円程度の予定)

ご都合のつく方は、是非お越しください。
(参加される方は、何らかの形で私まで御連絡くださいますと幸いです。私の連絡先が分からない方は、このブログのコメントにその旨を書いていただければ大丈夫です。)