北欧研修③ ~福祉の現場にて

前回のブログを読み直してみて、何を言わんとしているのか分かりづらいですね・・。まだまだであります。
以下を、前回分の内容に付け足します。

今回訪れた知的障害者施設では、施設職員の方が障害者の皆さんとじっくり向き合えるだけの職場環境ができているように感じました。
また、建物内の壁や廊下には、額に入った絵画や写真が飾られているなどしていて、とても明るく優しい気持ちになれる空間が作られていました。
そして、施設を利用されている障害者の皆さんは、非常に明るく穏やかな表情をされていました。

研修出張前、勉強のために北欧の文献をいくつか読む中で、「利己主義ではない真の『個人主義』」という旨の表現を何度か目にし、よくイメージしきれなかったのですが、このとき現地にて、個人の意思が尊重されている環境と障害者の方の表情を見て、おぼろげながらなんとなく分かってきたような気がしました。

次に、訪れたのは「高齢者入居施設(複合集合住宅)」です。
2つの施設に行きました。

高齢者施設③(デンマーク)(←1つ目の施設名は「クララハウス」。この方が、対応してくださった施設長です。元々は福祉とは関係ない分野の技術者だったそうで、福祉の現場で働いた経験は無いとのことでした。ポストごとに採用がなされるので、施設のトップというポストに就くにあたり、経営さえできれば、福祉の現場での経験が必要条件となるわけではないとお話されました。)

高齢者施設⑦(デンマーク)(←2つ目の施設名は、「スラテット」。奥に座っていらっしゃる方が、施設長さんです。元看護師のとのことでした。)

それでは、以下に箇条書きでまとめます。

◎人事について ~『人事権の独立』
まず、職員は全て公務員です。
市の施設ですので、市の職員です。
デンマークには、基本的に民営の福祉施設はありません。
職員採用や、施設内のスタッフ配置など、施設長に人事の権限があります。
(正確には、採用については、施設内の職員で構成される採用委員会で決めるとのこと。)
また、日本であれば、公務員は人事異動があり、本庁勤務であったり、出先機関や施設等に異動することがありますが、デンマークでは異動・転勤はないとのことでした。

他にも、日本と大きく違うこととして、公務員が終身雇用ではありません。
ポストごとに採用がなされるので、例えば市の福祉課長のポストが空くと、そのポストごとに採用募集があることになります。
なので、前述の「クララハウス」の施設長が、全くの畑違いから、その仕事に就くということが有り得るのです。

◎予算について ~『経済的な分権』
この施設の各部屋には、バス・トイレがついており、1つ1つが完全に独立したアパートのような感じでした。
そして、入居者は、家賃や光熱費などの住居にかかる必要経費を払います。
つまり、日本で普通にアパートを借りた場合と同じように、それにかかる費用は入居者本人が払うイメージです。

しかし、入居者は介護にかかる経費を払う必要がありません。
市が年間予算を組んでおり、それで施設運営(介護など)がなされています。
その年間予算の85%が人件費です。
(「総予算の85%が人件費」というのは、前述の知的障害者施設も同じです。)

そして、ここからが重要なのですが、年間予算は所長の権限で全て使うことができます。
うまくやりくりをし、経費を浮かして、新しいことに取り組んでもよく、次年度以降に繰り越すことも可能です。

例えば、洗濯をこれまで業者に委託して行っていたものを、職員がするようにして浮かせたお金を貯めておいて、入居者の満足度を高めるために音楽室を作るといったことをしてもいいのです。

市の関与としては、赤字かどうかだけとのことでした。
(ちなみに2%までは、赤字を出しても良いとのこと。)

この『人事』と『予算』について、これだけの分権がなされていることは非常に進んでいると感じました。

高齢者施設④(デンマーク)高齢者施設⑥(デンマーク)

高齢者施設⑤(デンマーク)
(施設内の壁には、多くの絵画が飾られていました。おしゃれな空間だなというのが感想です。)

◎今回訪れた施設は、認知症の入居者が多いとのことでした。
その介護の方針について、以下のお話しが施設長からありました。
「認知症の方は、不安を感じてしまうと、きょろきょろ動き回ってしまう。そう感じない環境を作らないといけない。職員がドタバタ仕事をするような状況だと、認知症の方も落ち着けない。音楽や匂いなどにも気を配り、入居者はもちろんスタッフも落ち着ける空間づくりが大切だ。」
他に、「人権の尊重とは、デンマークでは一人一人の価値観の尊重なんだ」という言葉もありました。

高齢者施設⑧(デンマーク)前述の「利己主義ではない真の『個人主義』」という言葉について、実際に現地に行き、デンマークのいろんな方とお話しさせていただく中で感じたのは、「自分を大切にすること。その価値が分かっているから他人を大切にできる。」ということです。
デンマークでは、それに立脚して社会保障が組み立てられていると感じました。

高齢者施設⑨(デンマーク)また、デンマークの福祉省事務次官補のところにも訪問させていただきました。
政府高官であります。
(←福祉省の正門。)
それでは以下に箇条書きでまとめます。

◎2006年の総選挙にて、社会民主労働党から、右派の穏健党中心の連立政権となり、機構改革がなされ、「社会省」から「福祉省」となったとのこと。
この機構改革により、管轄は福祉だけでなく、内務・自治(地方)・住宅(建築)も含み、大きな省になったということで、「福祉」と「地方」を重要な位置付けにしている国なのだと改めて思いました。

◎デンマークでは、2007年に大規模な自治体改革を行っています。
13の「県」を再編して5つの「地方」とし、270の「コミューン(市町村)」は98となりました。
この目的は、小規模な自治体であると解決できないことが多かったので、組織的にも財政的にもしっかりとした体制にするためであったとの説明がありました。

高齢者施設⑩(デンマーク)日本と少し違うのは、「財政危機が迫ってきたから」というのがきっかけの大きな1つになっていないということです。
「よりよい住民福祉を実現するために万全な体制にする(つまり、自治体合併をする)」ということが、デンマークでの改革の出発点になっており、言葉にすれば少しの違いですが、これは非常に大きな違いです。

ただ、日本と単純比較できないのは、国土が狭いため、「市町村合併により周辺地域が寂れる」という問題は起きていません。

しかし、対処療法的に改革を行うのではなく、長期的な視点から、より良い形を目指して改革を行っているデンマークの姿勢に学ぶべきことは多くあると思います。

まとまってませんが、時間の都合により今日はここまでとさせていただきます。

さあ、次回から「スウェーデン」です!!

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