北欧研修④ ~スウェーデンの「コミューン」(市町村)

それでは、メインの研修地である「スウェーデン」について書いていきます。

ここで、今回の研修テーマを改めて書きたいと思います。
 ①「スウェーデンの地方分権について」
 ②「高負担高福祉国家の実情について」

この調査を行うにあたって、私は「行政」「企業」「住民」という3つの切り口を考えました。
研修計画の作成に取りかかった当初は、訪問国の行政機関だけを念頭に置いていましたが、それだけでは全体像が見えてこないのではないかと思い、経営者と住民の方への調査を追加しました。
(研修を終えてみて、このやり方は成功だったと思っています。)

ヨーテボリ市役所(スウェーデン)それでは中身に入ります。

最初に訪れた都市は、「ヨーテボリ市」です。
人口は、約47万人の都市です。

まず、ヨーテボリ・コミューン(市役所)に訪問しました。
←対応してくださったのは、市の「広報部長 兼 選挙管理部長」という役職の方です。

スウェーデンは「国民負担率」が、日本やアメリカと比べると非常に高い国家です。
国民負担率とは、租税負担率と社会保障負担率を足した合計です。(国民負担率=租税負担率+社会保障負担率
租税負担とは所得税や消費税などの税金のことで、社会保障負担とは年金の保険料などのことです。

ヨーテボリ市役所(スウェーデン)②各国の国民負担率は日本やアメリカは30%代後半で、ヨーロッパ先進国の多くが50~60%、そしてスウェーデンは70%を超えています。
つまり、日本では収入の4割弱が税金や保険料の支払いとなりスウェーデンでは、なんと日本よりもはるかに高い7割以上がその支払いになっているということです。

これは、高負担である分だけ高保障ということなのでしょうが、今回の研修で知りたかった事の一つとして、スウェーデンの国民が、これだけの高い税金を受忍できる『感覚』というのがどういうものなのだろうか?というのがありました。

日本で、「社会保障をしっかりするから」と政治家や国が言っても、今の国民の感覚からいって、スウェーデン並みの高い税率にするのは不可能に近いと思います。

ヨーテボリ市役所(スウェーデン)③
(←ヨーテボリ市庁舎の外観①)

このことについて、私は、日本とスウェーデンとの大きな違いとして、政府や自治体に対する高い信頼があるのだろうと推測しました。

そして、この疑問を、今回対応してくださった市役所の部長にぶつけてみました。

その方は、「まずは歴史が違う」ということで、アメリカとスウェーデンにおける政府と国民との関係の歴史について説明してくださいました。(が、細かいことは割愛します。)

例として話してくださったことの中に、「Personal ID Card」のお話がありました。
日本で数年前に議論になり、マスコミを始め、反対が多かったために立ち消えとなった「国民総背番号制」のことです。

このIDカードを国民は喜んで受け入れたのだと話されました。
それは政府に持ちなさいと言われたからではなく、自分たちにとって良いことだから喜んで持ち歩いているのだということです。

ヨーテボリ市役所(スウェーデン)④(←ヨーテボリ市庁舎の外観②)

他にも、税金のことで、以下のお話をされました。
「どこの国でも、増税は嫌である。スウェーデンでは、なぜ増税が必要なのか、その増税の結果(見返り)が何であるのかをしっかり住民に語りかけている。住民とのコミュニケーションが大切である。うまく住民に説明をしなければならない。」

スウェーデンにおける高い投票率について話が及んだ際には、発展途上国を例に出して、「例えば、ある国で圧政から解放され、民主主義が持ち込まれて投票できるようになったとしても、その後、10年、20年経っても生活が変わらないとしたら、「民主主義なんて意味がない」と国民は考えるようになるだろう。スウェーデンでは、良い方向を目指して、常に改革を行っている。そして、国民は民主主義の良さを感じるから、高い投票率を維持できている。「政府や自治体が変化をもたらしてくれる」と国民が考えているから投票に行くのだ。」ということを話されました。

恭子さんと。(←メチャクチャお世話になりました通訳さんと。)

最後に、財政について。
コミューン(市町村)は、独自に課税権を持っているので、必要なものは自ら課税できます。
また、国からの財政支援について、いわゆる「ひも付き補助金」は、以前はありましたが、今はもう無く、国からもらう予算は自治体の裁量で自由に使えるとのことでした。
(その額は、政府が自治体ごとに学校・消防・老人ケアなどに必要な基準額を算出。これは日本と同じですね。しかし、国が使い道まで細かく指定してくるのか、自治体の裁量で自由で使えるのかという大きな違いがあります。)

ひとまず、今回はここまで。
だらだらと毎回書いていますが、最後に全体を総括する予定です。

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